Data - Cou

make me sad,
make me mad,
make me feel
alright?

Data

Cou

  • Cou021:

    illness-psychomotor-worry

    Cou.021illness - psychomotor - worry

    岩倉玲音:
    当てはめると、何になるの?

    米良柊子:
    そうね。
    「影響妄想」って言って、何かに影響されているって感じる妄想かな。
    ラジオやテレビや携帯電話に影響を受ける妄想。
    加えてその影響で皮膚を触られる、撫でられる、電気が走るとか、体に感じる幻覚を同時に起こすこともあるの。
    玲音は「何かに触られてるって感じたことがある。」って言ってたよね。

    岩倉玲音:
    うん・・・。

    米良柊子:
    妄想じゃなくてもセネストパチーって病気も実際あるし。
    そう、それから玲音は「自分が自分でないような気がする。」って言ってたわね。
    それは「虚無妄想」と言って、自分が空虚で存在しない世界も存在しないと思う妄想にも当てはまるわ。
    これは自己を過小評価することからくる妄想ね。

    岩倉玲音:
    自己を過小評価?

    米良柊子:
    自分のことを「なんてつまらない人間なんだ」とか、悲観的に考えることよ。
    さっきの被害妄想も、同じ種類の妄想なの。

    岩倉玲音:
    いっぱい・・・病気なんだ・・・私。

    米良柊子:
    まだあるわ。

    岩倉玲音:
    もういいよ。

    米良柊子:
    「心気妄想」って言って、自分に特別な病気があるって信じる妄想。
    自分が病気だと思っちゃう病気なの。
    本当は病気じゃないのに。
    ・・・先生はね、玲音の問題の多くはこれじゃないかって思うの。

    岩倉玲音:
    本当は、病気じゃない病気?

    米良柊子:
    そう。
    自分に自信がなくて、ちょっとの不安が怖い夢と一緒になって病気って思い込んでる。

    岩倉玲音:
    治るの?

    米良柊子:
    そうよ!だって本当は病気じゃないもの。
    ・・・ごめんね、脅かしちゃって。
    でもね、中途半端な知識で考えると、精神医学はどうにでも取れちゃうのよ。
    病気にできちゃうの。
    大抵の人は本人や周りの人が普通に生活できなくて、困ってお医者さんに来るから病気として治療するの。
    その時にどうやって治したらいいかを判断するための基準でもあるの。
    だから玲音のように普通に生活できている人は、病院に行かなかったら病気にはならないの。

  • Cou022:

    counselor-hallucination-stress

    Cou.022counselor - hallucination - stress

    岩倉玲音:
    病院に来たから、病気になったの?

    米良柊子:
    そうね。
    でも玲音は生活できるけど、困ってるよね?
    それをなくすのはカウンセラーの仕事でもあるの。

    岩倉玲音:
    柊子さんはカウンセラーなの?前はお医者さんだって。

    米良柊子:
    私はどちらの資格も持ってるの。

    岩倉玲音:
    何が違うの?

    米良柊子:
    精神的な問題で困っている人を助けるっていう点で、本質的には何も違いないわ。
    ただ、資格や治療方法が違ってるだけ。
    だけど、それぞれ長所や短所があって、もうちょっとお互いのやり方を尊重し合えて、一緒に治療できたらいいかなって思うの。
    そう思って、先生は両方の資格を取ったの。

    岩倉玲音:
    今は?
    私と会う時はどっち?

    米良柊子:
    カウンセラーよ。
    玲音の場合はそれがいいって思ったの。

    岩倉玲音:
    私、精神病じゃないの?
    私が見えるあれは、幻覚なんだ、って・・・。

    米良柊子:
    確かに、病気でそういった幻覚や妄想の症状が起こることはあるわ。
    でも・・・これは直感だけど、玲音はそんな感じしないわ。

    岩倉玲音:
    私、気にしすぎ?

    米良柊子:
    ひょっとしたらそうかもね。
    見えすぎたり聞こえすぎたりすることが、玲音にストレスを与えてるのかもしれないわ。

    岩倉玲音:
    どうすればいいの?柊子さん。

    米良柊子:
    うーん・・・「気にしないで。」って言っても、気になるものね。

    岩倉玲音:
    でも、もう気になってないよ。
    慣れてきた。
    でも、あれは慣れない。

    米良柊子:
    あれって?

    岩倉玲音:
    私が今の私じゃないの。

    米良柊子:
    どんな玲音なの?

    岩倉玲音:
    私なの。
    その人も。

    米良柊子:
    どうしてそう思うの?

    岩倉玲音:
    よくわからない。
    柊子さんは自分が自分だと思えないことってない?

    米良柊子:
    うーん・・・後から考えると、私何考えてたんだろう?ってあるけど、その時に自分じゃないって感じたことはないなぁ。
    玲音は自分が2人いるって思うの?

    岩倉玲音:
    違う。
    私は私で・・・そうじゃないの。

    米良柊子:
    不思議ね。
    でも玲音がそう感じるなら、それはそうなのよ。
    間違ってなんかないのよ。

    岩倉玲音:
    でも、普通じゃない。

  • Cou023:

    normal-special-consultation

    Cou.023normal - special - consultation

    米良柊子:
    玲音は普通に憧れてるのね。

    岩倉玲音:
    多分・・・。

    米良柊子:
    私は羨ましいわ。
    人間の感覚なんていい加減なもので、そう感じたら、思い込んじゃうものなのよ。
    私が私であるなんて絶対説明できないことでしょ?
    でもそのことに疑問を持てるって・・・それはそれで、特別な能力なのよ。

    岩倉玲音:
    いらないよ、そんなの。

    米良柊子:
    そうね、今はいらないって気持ちが強いと思うの。
    でも、それがきっと玲音にとっていいことも起こしてくれると思うのよ?
    よくわからないけど、それも含めて玲音なんだって自分で思えるようになった時、きっと玲音の役に立つと思うわ。

    岩倉玲音:
    私はこのまま?

    米良柊子:
    わからないわ。自然に変わっていくかもしれないし、このままもう怖い夢を見ないかも。
    そしたら、玲音は普通の子と変わらないわ。

    岩倉玲音:
    でも、治ったかわからない。いつ、また見るかもしれない。

    米良柊子:
    そうね。
    でも、これからは違うわ。

    岩倉玲音:
    違うって?

    米良柊子:
    玲音は一人じゃないってこと。
    先生に言ってくれれば、先生が相談に乗れるって事。

    岩倉玲音:
    そうだね、柊子さん。

  • Cou024:

    favorable turn-deterioration-thought

    Cou.024favorable turn - deterioration - thought

    岩倉玲音:
    おはよう、柊子さん。

    米良柊子:
    おはよう。
    調子はどう?元気にしてた?

    岩倉玲音:
    うん。
    先月、なんか色々柊子さんに聞いて、なんとなくだけど楽な気分になれたの。

    米良柊子:
    そう、よかったわ。
    本当はああいう話をするのはいけない、ってされてることなの。
    余計に憶測して、取り返しのつかない状態になるケースも実際にあるのよ。

    岩倉玲音:
    取り返しのつかない?

    米良柊子:
    うん・・・病気が悪化しちゃったり、ひどい時には自分を傷つけたり。

    岩倉玲音:
    自殺?

    米良柊子:
    まあ、最悪のケースだけどね。

    岩倉玲音:
    私、死にたくない。

    米良柊子:
    もちろんよ!玲音はそんな状態なんか程遠いわ!
    でも人は精神的に病んでしまうと、私たちと別な価値観で動いてしまうことがあるの。

    岩倉玲音:
    別な価値観?

    米良柊子:
    命を失うことや体を傷つけることに恐怖を感じなくなったり、逆にそれが自分にとってすごくいいことだって思い込んじゃうの。
    そんなの理解できないでしょ?

    岩倉玲音:
    私は怖い。

    米良柊子:
    ほら!玲音は私と一緒でしょ?
    普通なのよ、それが。

    岩倉玲音:
    うん。

  • Cou025:

    favorable turn-engagement-pursuit

    Cou.025favorable turn - engagement - pursuit

    米良柊子:
    あれからは、何か見えたりとか聞こえたりした?

    岩倉玲音:
    ないよ。

    米良柊子:
    やーっぱりね!気の持ちようなのよ、玲音。
    多分もう見えないって思うけど、また見えてもがっかりしないで、ゆっくり治せばいいの。

    岩倉玲音:
    まだ治らないの?

    米良柊子:
    うん、わからないわ。
    玲音が初めてそうなったのはいくつの時からなの?

    岩倉玲音:
    11歳の時。

    米良柊子:
    じゃあ、もう1年以上にもなるのね。
    その間に何回ぐらいそうなったの?

    岩倉玲音:
    覚えてない・・・いっぱい。

    米良柊子:
    こういうのって、突然明らかな原因がなくても、急に見なくなったりするの。
    ただ、見なくなったからって安心しちゃうと、また見えたりするケースもあるのよ。
    あ・・・必ずしもそうなるとは言えないけどね。
    だから見なくなっても、しばらくは今まで通り通ってもらったりしてるの。
    ねぇ、玲音はもうここには来たくない?

    米良柊子:
    そんなことないよ。
    柊子さんに会いたいって思うことあるもの。

    米良柊子:
    ありがとう。
    そしたら問題ないわね。
    何にも問題ないけど、しばらくはちゃんと先生のとこに来るって約束してね。

    岩倉玲音:
    うん。
    その代わり、いろいろ教えてほしいの。

    米良柊子:
    何?宿題とか?いいわよ。
    こう見えても先生は、一応中学の時は学年でもトップクラスだったんだから。
    ふふっ、でも、国語はちょっとダメかな。

    岩倉玲音:
    違うの。
    先生のお仕事のこと、もっと知りたいの・・・ダメ?

    米良柊子:
    うーん、あんまり良くないんだけど・・・。
    ま、でも玲音が興味持ってるんなら、いっかな。
    興味があることを追求するのが、正しい勉強でもあるしね。
    ただ、学校の勉強もちゃんとしないとダメよ?
    それが約束できるなら、先生は教えてもいいけど。

    岩倉玲音:
    うん、約束する。

    米良柊子:
    嘘ついたら?

    岩倉玲音&米良柊子:
    針千本!!あははっ・・・。

  • Cou026:

    thought-drunk-stress

    Cou.026thought - drunk - stress

    岩倉玲音:
    先生はカウンセラーで、精神科医なんだよね?
    精神科医って「精神病を治す人」でいいの?

    米良柊子:
    そうね、簡単に言えば心のお医者さんね。
    前にも言ったけど、精神病って概念は結構難しいの。

    岩倉玲音:
    精神病って、本当はどんな病気なの?

    米良柊子:
    うん。
    大雑把に言えば、何かの原因で心が病んでしまって、通常の生活が送れなくなったり、困ってしまう病気かな。

    岩倉玲音:
    何かの原因?例えば?

    米良柊子:
    いっぱいあるけど、一つは心の問題。
    家庭環境や生活環境の問題でおかしくなることもあるし、突発的な精神的ショックでなることもあるわ。
    そう、例えば大事にしてたペットが死んじゃったりして、そうなるケースだってあるわ。
    それと、体のどこかの障害が元で発病することもあるの。
    単純に事故とかの外傷でそうなったり、お酒の飲み過ぎで脳の機能がおかしくなったりね。

    岩倉玲音:
    アルコール中毒?

    米良柊子:
    そう!ふふっ、さすがね。
    お酒を飲んでばかりいる、と血液中にアルコールがいっぱいになるの。
    ほら、酔っ払いのおじさんってフラフラしてるでしょ?あれはアルコールのせいで、体の器官が麻痺してるの。

    岩倉玲音:
    でも、普通の人はならないんだよね?

    米良柊子:
    そんなことないわ。
    アルコールが体から抜けるには、24時間ぐらいかかるの。
    毎日飲んでいたら1年中アルコール漬けの体になるわ。
    ずーっと麻痺してると、感覚そのものがおかしくなるの。
    具体的には脳の組織が機能しなくなったり。

    岩倉玲音:
    怖いね。

    米良柊子:
    怖いことよ?
    でも先生も時々、お酒は飲むの。

    岩倉玲音:
    危なくない?

    米良柊子:
    ふふっ、多分ね。タバコとかもそうだけど、お酒を飲んで騒いでストレスを解消するのよ。
    ストレスが解消されることは、体にとってすごく大事なことなの。

    岩倉玲音:
    ストレスって・・・よくわからない。

    米良柊子:
    昔、玲音はここに来るのが嫌だったよね?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    その嫌な気持ちを与えることを、ストレスっていうの。
    無くなって良かったでしょ?

    岩倉玲音:
    うん。
    他に病気の種類は?

    米良柊子:
    うん・・・ちょっと待ってね、なーんかしゃべりすぎて、喉が渇いちゃった。

  • Cou027:

    hairstyle-charm-seem

    Cou.027hairstyle - charm - seem

    米良柊子:
    ねぇ。前から聞きたかったんだけど、玲音はどうしてそういう髪型にしているの?

    岩倉玲音:
    変だよね。

    米良柊子:
    ううん、すごく似合ってるし、かっこいいわ。
    中学とかで流行ってるの?

    岩倉玲音:
    違う、私だけ。

    米良柊子:
    玲音はみんなと同じに、普通になりたいって言ってたわよね?
    なんでそうしてるの?

    岩倉玲音:
    右から入ってくるの、多分。
    それで左から出てくの。
    だから。

    米良柊子:
    そう。
    そうしてると、落ち着けるからなの?
    ・・・ふふっ、おまじないみたいなものね。
    先生も昔、やってたなぁ。

    岩倉玲音:
    柊子さんも?

    米良柊子:
    うん。
    あー、髪型とかじゃないけど。
    ウサギの足のペンダントがあってね、それを持ってると幸せになれるって信じて、鞄にぶら下げてたの。
    冷静に考えたら、すごく不気味なことよねー。
    あんな愛らしい動物の足を鞄にぶら下げて歩いてたなんて。
    でもそれを信じることで、助かっていたって気もするんだ。

    岩倉玲音:
    おまじない?

    米良柊子:
    うん。
    でも、玲音はすごく似合ってるわ。
    玲音が普通の髪型になったら、その方が玲音らしくないかもよ?
    そのままにしておいた方がきっといいわ。

  • Cou028:

    image-explanation-individuality

    Cou.028image - explanation - individuality

    米良柊子:
    神経症も知ってるの?
    うーん、すごいわね、玲音。
    今度は玲音にカウンセリングしてもらおっかな。

    岩倉玲音:
    言葉だけだよ。
    意味なんてよくわからない。

    米良柊子:
    どんなイメージ?

    岩倉玲音:
    神経が変になっておかしくなる病気。

    米良柊子:
    うん、いい線いってるね。

    岩倉玲音:
    ひどい、先生、もう教えてくれないの?

    米良柊子:
    ううん、違うのよ。
    本当にいい線いってるの。
    本当は神経症って、体の原因がなくて何かを怖がったり、何かに脅迫されてるような気がすることで、ストレスを感じて病気になっちゃうものなの。

    岩倉玲音:
    心の中だけの病気?

    米良柊子:
    うん・・・昔はそう考えられていたの。
    でも研究してみたら、自律神経系の不安定が伴うことが多くて・・・えぇと、だから、体の中の神経がおかしくなっているんじゃないか、って考えもあるの。
    体にも影響が出るものを、心身症って言って区別していたんだけど、そうじゃないって定義されていたはずの神経症も、実は体に関係していたってわかってきたの。

    岩倉玲音:
    心身症・・・って?

    米良柊子:
    あんまりいっぱい聞くと、頭がパンクしちゃうわよ?
    ほら、ストレスで痩せちゃったり、頭にハゲができちゃったりって、聞いたことない?あれのことよ、あっ玲音、まさか・・・。

    岩倉玲音:
    違うよ、そんなのないよ。

    米良柊子:
    あーよかった。口は災いのもとね。

  • Cou029:

    recognition-expression-research

    Cou.029recognition - expression - research

    岩倉玲音:
    病名って、誰が決めるの?

    米良柊子:
    それぞれのお医者さんね。
    ただ、一応の基準はあるのよ?
    「ICD」や「DSM」っていう国際基準があって、ある程度「こういう症状の時はきっとこんな病気だろう」って。
    玲音が思っているように、心の中はもともとよくわからないものだから、毎年のようにいろんな報告があって、少しでも診断に役立てるようにデータが集められて、分類されていってるの。

    岩倉玲音:
    わからない?先生でも?

    米良柊子:
    本当のところ、先生たちにも全く分からないことばかりなの。
    例えばあるケースにおいて、以前こうしたら治ったから、その方法を取ろうとか、結構経験的なものだったりするの。

    岩倉玲音:
    治るかどうかもわからないのに?

    米良柊子:
    そう、治るかどうかなんてわからないの。
    ただこうしたら治ったとか、こうしたら危険が少ないとか、そういうことでしかないケースが大半なの。
    でもね、患者さんにとってもだけど、基本的に治ることが大事で、そのメカニズムを調べることは別の研究なのよ。

    岩倉玲音:
    そうなんだ。すべてわかってしまえばいいのにね。

  • Cou032:

    favorite-happiness-dislike

    Cou.032favorite - happiness - dislike

    米良柊子:
    玲音の名前ってR・Dレインからとったのかなぁ?・・・ふふっ、まさかね。

    岩倉玲音:
    R・Dレイン?人の名前?

    米良柊子:
    イギリスの精神科のお医者さんで、ちょっと変わった人なの。
    翻訳されてる本のタイトルが面白いわよ。
    「好き?好き?大好き?」っていうの。

    岩倉玲音:
    「好き?好き?大好き?」

    米良柊子:
    先生も大学の時に読んだんで、もううろ覚えだけど。
    確かね、恋人同士の男の人と女の人がいて、女の人が男の人に「私のこと好き?」って聞くの。
    それでもちろん恋人だから「好き好き!」っていうのよ。
    でも彼女は満足してなくて、もっともっと質問してくるの。

    岩倉玲音:
    よくわからない。

    米良柊子:
    そうね、じゃあ玲音は先生のこと好き?

    岩倉玲音:
    うん、好き。

    米良柊子:
    お父さんよりも?お母さんよりも?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    嬉しいなぁ、本当?

    岩倉玲音:
    本当だよ。

    米良柊子:
    じゃあ玲音は私といると、幸せ?

    岩倉玲音:
    よくわからないけど、多分そうだと思う。

    米良柊子:
    玲音は私と話をするの、好き?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    私のどこが好き?

    岩倉玲音:
    優しいところと、玲音の話を聞いてくれるところ。

    米良柊子:
    優しいのと話を聞いてくれるの、どっちが好き?

    岩倉玲音:
    どっちか?

    米良柊子:
    そう、どっちか。

    岩倉玲音:
    ・・・優しいから好き。

    米良柊子:
    優しいって、どういうことが玲音に優しいの?

    岩倉玲音:
    怒らないし、親切だから。

    米良柊子:
    でも玲音に怒らない人もいっぱいいるわ。
    玲音に親切にしてくれる人も、私の他にいるでしょ?
    本当に、玲音は私のこと好きなのぉ?

    岩倉玲音:
    よくわからなくなっちゃった。
    そんなに考えなくちゃいけないの?もうやめようよ。
    私、なんだか、先生のこと嫌いになっちゃいそう。

  • Cou033:

    state-impossible-identification

    Cou.033state - impossible - identification

    米良柊子:
    ふふっ・・・ごめんなさい。
    ちょっと説明ついでにやってみたの。
    先生も玲音のこと、だーい好きよ。
    理由なんかどうでもいいの。
    玲音と一緒に話ができることが、先生は嬉しいの。
    ただそれだけ。
    それは・・・でも、先生の一方的な思いなの。
    玲音には関係がありそうで、関係ないの。
    先生は、そう思ってる自分がわかるだけでいいの。
    それ以上は結局、わからないことでしょう?玲音が先生のこと、先生と同じように好きかなんて。
    玲音の心の中を、先生は見られないんだから。

    岩倉玲音:
    ・・・何だか、寂しくなっちゃった。

    米良柊子:
    ごめんなさいね。
    でも、そんなものだって解釈もあるの。
    でも、私のこと「好き」って言ってくれる玲音に、私は喜びを感じるのよ。
    玲音は先生に「好き」って言われて、嬉しい?

    岩倉玲音:
    うん、嬉しい。

    米良柊子:
    そう、それだけでいいの。
    先生は玲音を「大事な友達だ」って思ってるの。
    玲音のことを全てわかることは、不可能なのよ。
    玲音も先生のこと、全部はわからないでしょ?もし全て分かってしまったら、先生は玲音で玲音は先生になっちゃうでしょ?
    つまり、同じ人間になっちゃったら、玲音が玲音でいる必要がなくなっちゃうでしょう?
    ・・・先生は、わからないことがいっぱいあっても、玲音が好きなの。

    岩倉玲音:
    「よくわからない玲音」が好き?

    米良柊子:
    そうね、「よくわからない玲音も」好きね。
    それは全部じゃないの。

    岩倉玲音:
    私は先生のこと、全部わかりたい。

    米良柊子:
    それは先生も一緒よ。
    でも不可能なのよ。

    岩倉玲音:
    不可能?

    米良柊子:
    そう。
    だって自分が何であるかもわからないもの。
    玲音に説明したくてもできないわ。
    玲音は玲音で、私は私。
    ・・・でもね、玲音と私が同じ人間になっても、ダメかもしれない。

    岩倉玲音:
    同じ人間?

    米良柊子:
    そう。
    玲音と私が全く同じ人間。
    同じものが見えて、同じ考え方をして、同じ行動を取る。見た目も何もかも一緒。
    そしたら、私と玲音がいることは、「私」って認識しかないでしょ?でもそれさえもなくなっちゃうの。
    玲音が玲音だと思っちゃうと、先生は存在できないのよ。
    先生が先生だって思ったら、玲音はいなくなっちゃうの。
    だから二人が同時に分かり合えることは不可能なの。

    岩倉玲音:
    でも先生は玲音が聞いたら、説明してくれるよ?それでもダメ?

    米良柊子:
    うん・・・でも全部じゃないわよね?
    全部答えるには長~い時間が必要だし、答えは常に変わっていくこともあるじゃない。
    昨日はこう思ってたんだけど、今日はこう思うとか。

    岩倉玲音:
    結局、ダメなんだね。

    米良柊子:
    そうね・・・玲音の中に先生が入ってしまって、いつでも答えられればいいんだけど。

  • Cou034:

    school-experience-misato

    Cou.034school - experience - misato

    米良柊子:
    学校は楽しい?

    岩倉玲音:
    うん、すごく楽しいよ。

    米良柊子:
    何が楽しい?

    岩倉玲音:
    友達と話したり、一緒に遊んだりするのが。

    米良柊子:
    良かったね。
    学校が楽しいっていいよね。

    岩倉玲音:
    先生は、楽しくなかった?

    米良柊子:
    うん・・・一時期、先生は友達が少なくて、学校がつまんなかった人なんだ。
    玲音も友達がいなくなったら寂しいでしょ?

    岩倉玲音:
    うん。
    ・・・ごめんなさい。

    米良柊子:
    なんで?

    岩倉玲音:
    嫌なことを思い出したんでしょ?

    米良柊子:
    ・・・そうね、あんまりいい思い出じゃないわ。
    でもいいの。後悔してないって言ったら嘘になっちゃうけど、今こういう仕事をしてるのも、そういうことがいい経験になってるのかもしれないし。

    岩倉玲音:
    いい経験?

    米良柊子:
    先生はお勉強して、例えば学校に行きたくない人の心理構造を解析したりするの。
    自分がそうだった頃の経験が、役に立つこともあるわ。

    岩倉玲音:
    難しい。

    米良柊子:
    ごめんなさい、玲音にはちょっと難しいよね。
    ごめーん。先生ったら仕事のことになると、つい周りが見えなくなっちゃうの。
    先生失格だね。他の話をしようよ!お友達はどんな人?

    岩倉玲音:
    明るくて、仲良くしてくれる。
    一緒にいると、楽しい。

    米良柊子:
    名前は何て言うの?

    岩倉玲音:
    ・・・美里ちゃん。

    米良柊子:
    ふーん、美里ちゃんか。
    いつもどんな遊びしてるの?

    岩倉玲音:
    美里ちゃんのお家に行ったりして、本を一緒に読んだり、美里ちゃんのバイオリン聞いたり。

    米良柊子:
    そう、バイオリンができるんだ!すごいなあ。いい友達ね。
    よかったら、今度一緒にここに連れてきてもいいよ。

    岩倉玲音:
    でも、恥ずかしがり屋だからダメだよ。

    米良柊子:
    えっ、恥ずかしがり屋?

    岩倉玲音:
    多分。
    聞いてみる。でも、多分嫌だって言うと思うの。

    米良柊子:
    うーん、残念だなぁ。

  • Cou035:

    idolize-alienation-missing self

    Cou.035idolize - alienation - missing self

    岩倉玲音:
    柊子さん、デジャブって病気じゃないよね?

    米良柊子:
    ええ。
    それとは逆に、普段見慣れた風景を初めて見たって感じることもあるけど。
    どっちもそれを見たからって、病気とは言えないわね。
    ごく普通の人でも、感情の状態によっては見ることがあるものよ。

    岩倉玲音:
    よかった、ちょっと安心した。

    米良柊子:
    玲音はそれを感じた時って、他にどんな感じがした?

    岩倉玲音:
    なんとなく、時間が変な感じで、早いのか遅いのか、よくわからない気がする。

    米良柊子:
    現実っていうか、普段の生活って感じはある?

    岩倉玲音:
    そういう気もするけど、よく考えると違うような・・・やっぱり違うと思う。

    米良柊子:
    なんかぼんやりって感じ?
    ピンとこないとか?

    岩倉玲音:
    うん。
    なんか「ちょっと違う」って。
    自分の家で遊んでるって認識してるのに、なんか私の家じゃなかったり。
    見たこともないような公園で遊んでいても、そこがどこかわからないけど、でも私にとってはいつもの自分の遊び場のような。

    米良柊子:
    不思議ね。
    玲音はそこにいる時は、落ち着く?
    それとも嫌な感じがする?

    岩倉玲音:
    わからない。
    でも、私は笑っていた。

    米良柊子:
    ・・・「自分」じゃなくて、「私」が?

    岩倉玲音:
    うまく言えないけど、多分「私」なの。

    米良柊子:
    その時、自分はどこにいるって思った?

    岩倉玲音:
    どこだろう。
    ただ見ていただけだったから。
    それは・・・。

    米良柊子:
    だから、どこからそれを見ていたの?
    ほら、普通に地面に立ってるとか、空中から見えたとか。

    岩倉玲音:
    わからない。
    まるでビデオを見ているように、私が映ってた。

    米良柊子:
    玲音?大丈夫?あんまり無理に考えなくていいのよ。
    ごめんなさい、先生つい聞いちゃうのよね。
    今日はもう終わりにしよう!ね?

    岩倉玲音:
    専門用語で何て言うの?こういうこと。

    米良柊子:
    ほらー、もうやめましょう?

    岩倉玲音:
    知りたいの、私のこと。

    米良柊子:
    ふぅ・・・じゃあ、今日の最後の授業ね。
    専門的な言葉で言うと、「知覚の疎隔」って言って、自分が感じているのとは違って、まるで他人が経験したことみたいに感じることよ。

    岩倉玲音:
    病気?・・・だよね。

    米良柊子:
    「離人症」って、自分が自分と感じられない病気の症状ではあるけど、玲音、あなたはきっと違うはずだから、変な心配しないで。

    岩倉玲音:
    違うって、証明できない。

    米良柊子:
    でも、もうそれが玲音を苦しめたりしてないわ。
    だから病気じゃないわ!
    やっぱり、こんなことしちゃいけなかったわね、玲音を不安がらせるだけよね。
    先生失敗しちゃった。

    岩倉玲音:
    違うよ、柊子さんは・・・柊子さんは悪くないの、私が無理やり聞いたんだから。
    私。それでも色々勉強したいの。
    柊子さんみたいになりたいの。

    米良柊子:
    玲音・・・。

  • Cou036:

    ego-personality-immature

    Cou.036ego - personality - immature

    岩倉玲音:
    「自我」って自分を感じることだよね?

    米良柊子:
    そうね。
    でも、専門的に言うと「自分自身として体験され、私として認識される人格の一部」なの。わかる?

    岩倉玲音:
    わからない。

    米良柊子:
    うーん・・・玲音って人格があるとするわね?その構造的な要素の一つとして、自我はあるの。
    言葉の問題になっちゃうけど、「自己」っていうと自分の全てを指すわよね?「自我」はその中で、経験したことが私の経験だったと認識する人格の要素の一つなの。
    「自分を自分だと思うこと」って言ったら、なんとなくわかる?

    岩倉玲音:
    最後はわかるけど、でも、まだわからない。

    米良柊子:
    いいよ、正直で。
    ねぇ、玲音って子は、いろんな面を持ってるでしょ?優しかったり、寂しがり屋だったり・・・そういう人格の中の一つっていう解釈なの。

    岩倉玲音:
    なんとなく・・・わかってきた。

    米良柊子:
    例えば・・・今日朝起きた時の玲音と、今ここにいる玲音は、同じ玲音だよね?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    明日の玲音も、きっと同じ玲音だよね?

    岩倉玲音:
    そうだと思う。

    米良柊子:
    つまり、「継続して自分が存在している」って認識できたり、それが間違いなく自分であると確認できることって、自我の働きなの。
    それが働かないと・・・。

    岩倉玲音:
    それが働かないと?

    米良柊子:
    医学的には「同一性障害」っていうわ。
    それと自分が自分じゃないって思うのは、「単一性障害」っていうの。
    ふふっ、なんとなく病気っぽいでしょ?
    ・・・でもね、玲音ぐらいの年の子って、まだ自我が未完成なの。
    だんだん自分ってものができてきて、はっきりしてくるものなの。

    岩倉玲音:
    そう思うのは、錯覚してるってこと?

    米良柊子:
    そう思い込んでしまってるだけのことが多いわね。

  • Cou037:

    therapy-recurrence-sleepless

    Cou.037therapy - recurrence - sleepless

    岩倉玲音:
    もし・・・私が病気だったら、柊子さんはどんな風に治そうって思うの?

    米良柊子:
    うーん・・・病気だったら?

    岩倉玲音:
    もし、だよ?

    米良柊子:
    そうね、玲音はまだ小さいし、この程度の症状だったら薬物療法はまずないわね。
    あぁ、お薬で治すってことよ。

    岩倉玲音:
    なんでお薬で治しちゃいけないの?

    米良柊子:
    玲音には、自分で治す力がちゃんとあるのに、他の力で治しちゃうと、治そうって力がサボっちゃったりするからなの。
    それと、子供のうちからそういう薬は、あんまり飲まない方がいいのよ。

    岩倉玲音:
    じゃあ、どうするの?

    米良柊子:
    そうだなぁ・・・。
    「精神療法」って言って、今みたいにお話ししていって治すかな。

    岩倉玲音:
    話すだけ?

    米良柊子:
    難しいんだけど、例えばアルコール中毒の人とかを治療するプログラムで、今までどんな飲酒をしてきたかみんなに発表したり、他の人の話を聞いたりするものがあるの。
    「集団精神療法」って言って、先生はあんまり好きじゃないな。

    岩倉玲音:
    なんで嫌いなの?

    米良柊子:
    みんなから説得されて自分を取り戻す人間なんて、どうせまた同じ目に遭うと思うの。
    一時の勢いで回復した気になるけど、一人になった時には、また同じことを繰り返してしまう。
    ・・・先生はそんな人を見てきたの。

    岩倉玲音:
    じゃあ、どうするの?

    米良柊子:
    私は、玲音とこうしているように、一対一で面と向かって話を聞くかな。

    岩倉玲音:
    それで?

    米良柊子:
    それで患者さんに自分のことを考えてもらうの。
    「非指示的精神療法」って言って、特に指示はしないで、中立的な立場でそれを分析するの。
    そうした作業をしていくと、患者さんが自分のどこがいけないんだって認識できて、自分で治していくことができるから。
    それができるようになったら、もう治っているのよ。

    岩倉玲音:
    本当にそれで治るの?なんか、簡単だね。

    米良柊子:
    そう、簡単なことなんだけど、でも実際はもっと複雑で、そう簡単にはいかないものよ。

    岩倉玲音:
    簡単にいかないもの?

    米良柊子:
    ふあーぁ・・・あはっ、ごめんなさい!ちょっと睡眠足りなくて。

    岩倉玲音:
    先生、疲れてるんだね。
    少し、ゆっくり眠った方がいいんじゃない?

  • Cou038:

    psychosis-function-research

    Cou.038psychosis - function - research

    岩倉玲音:
    頭がおかしくなるのって、本当にどこかおかしくなるの?

    米良柊子:
    頭だけが身体的な原因になるわけじゃないけど、脳はとても大事だし、脳の障害が原因でいろんな病気が起こるらしい、ってことはわかってるの。

    岩倉玲音:
    脳の障害って、何かが壊れてしまうの?

    米良柊子:
    人間の脳ってすごく複雑にできていて、まだまだわからないことがたっくさんあるんだけど、ある程度の機能をどこでどうやってしているかが、多少はわかってるのよ。

    岩倉玲音:
    記憶が海馬にあるって?

    米良柊子:
    そう。
    そんな風に前頭葉や口頭葉なんていう大まかな区切りに、それぞれ機能が分散されて処理されているって分かってるの。
    化学物質が脳の中にあって、それが変化することで、いろんな情報が取り交わされているの。

    岩倉玲音:
    それが壊れちゃうの?

    米良柊子:
    壊れたりすることもあるし、化学変化したり、情報を受け取るために必要な物質がちゃんと出なかったりすると、障害が起きるの。
    この脳の気質的病変に基づく精神障害のことを「脳気質精神症候群」っていうの。
    あはっ、難しくてわかんないよね?

    岩倉玲音:
    わかるよ。
    それを調べるために、脳波検査したり、CTスキャンするんだから。

    米良柊子:
    学校でもうそんなこと習うの?あ・・・それとも独学?

    岩倉玲音:
    この間ネットで調べたの。
    私も1回検査したし、興味があったの。

    米良柊子:
    ねえ、玲音。
    じゃあもう、先生と話さなくても大丈夫じゃない?

    岩倉玲音:
    そんなことないよ、柊子さんの話はすごく勉強になるの。
    本みたいな情報じゃないもの。

    米良柊子:
    ・・・ごめんなさい、なんか具合が悪くって。

    岩倉玲音:
    この研究所も脳の研究してるんでしょ?

    米良柊子:
    そうね。

    岩倉玲音:
    どんな研究?

    米良柊子:
    先生は専門外だし、こことは棟が違うの。だからあまり詳しくないわ。

    岩倉玲音:
    でもネットで公開されていたよ?いろんな研究の項目が・・・。

    米良柊子:
    ねぇ玲音お願い、今日は先生具合が悪いの。
    もう今日は終わりにできないかしら?

    岩倉玲音:
    ・・・ごめんなさい、柊子さん。

  • Cou039:

    be tired-odd jobs-suicide

    Cou.039be tired - odd jobs - suicide

    岩倉玲音:
    柊子さんの研究って、何の研究なの?

    米良柊子:
    研究って?
    私はまだ、研究なんて。

    岩倉玲音:
    でも、ここは研究所なんでしょ?

    米良柊子:
    あぁ・・・先生はまだ見習いだから、自分の研究はこれからなの。

    岩倉玲音:
    もう3年近くも経つのに?

    米良柊子:
    え?なんでそんなこと。

    岩倉玲音:
    先生が教えてくれたんだよ、自分で。

    米良柊子:
    ・・・そうだったっけ、ごめんなさい。
    なんだかこの頃、調子が悪くて。
    今日も、質問は少なめにしてほしいわ。じゃなければ、あんまり話さなくて済む話とか。

    岩倉玲音:
    先生、疲れてるんだね。
    少し・・・ゆっくり眠った方がいいんじゃない?

    米良柊子:
    疲れてる?そう見えるかしら?
    ・・・そうね、こんな格好だし。あっはは・・・。

    岩倉玲音:
    可哀想な柊子さん。
    雑用ばっかりで、自分の研究ができなくて。

    米良柊子:
    私はもう、雑用なんかしてないわ!
    ・・・ごめんなさい。
    何、私ってば、こんな声上げて。
    驚いちゃうよね?

    岩倉玲音:
    何かあったの?柊子さん?

    米良柊子:
    何もないわ。

    岩倉玲音:
    雑用ばっかりで、自分の研究ができなくて、辛いの?

    米良柊子:
    どうしてそんなこと。

    岩倉玲音:
    この研究所のホームページに、研究員のリストと、発表された論文が一覧で・・・
    でも、柊子さんだけが・・・。

    米良柊子:
    そうよ。私はここに来てから、論文を出してないわ。
    でも、もうすぐよ。

    岩倉玲音:
    もう大丈夫だものね。
    自分の研究の時間が、取れるから?

    米良柊子:
    どういうこと玲音?どういう意味?

    岩倉玲音:
    それに私は研究対象外なんでしょ?
    だから、柊子さんの役に立てない。
    もう、終わりにしてもいいよ?もう見えないから。
    私は・・・時間の無駄だもの。

    米良柊子:
    玲音・・・ねぇ玲音、私はあなたを妹だと思ってるわ。
    ただ話すだけでいいのって、私が言ったのよ。
    あなたを迷惑だなんて思ってないわ。
    それに・・・。

    岩倉玲音:
    柊子さんが気にすることはないと思う。
    だって、自殺なんだから。

    米良柊子:
    なんでそんなこと知ってるの?

    岩倉玲音:
    新聞で読んだから。
    それと、ここの掲示板で。

    米良柊子:
    ・・・そう。
    そうだよね。

    岩倉玲音:
    柊子さんの研究って?

    米良柊子:
    前に話したと思うけど、カウンセリングと精神科医の立場を使って、新しい治療のシステムを研究することよ。
    ・・・でも、これじゃどっちも失格よね。

    岩倉玲音:
    どうしてなの?

    米良柊子:
    私の方がなんだか精神的に不安定になっちゃって。
    さっきあんなに・・・ごめんなさい。

    岩倉玲音:
    柊子さん、大丈夫?

  • Cou040:

    treatise-tool-glad

    Cou.040treatise - tool - glad

    岩倉玲音:
    柊子さん・・・。

    米良柊子:
    おはよう。
    ごめんなさい、昨日も徹夜で論文用の資料を探したりしてて、こんなに散らかっちゃって。
    ちょっと待っててね。

    岩倉玲音:
    私、帰った方がいいかな?

    米良柊子:
    大丈夫、心配しないで。
    あぁ・・・紅茶も切れちゃってる。

    岩倉玲音:
    私、紅茶買ってくる。

    米良柊子:
    ありがとう。
    でも、気持ちだけでいいわ。
    さぁ座って?先生もちょうど休憩しなきゃって思ってたから。

    岩倉玲音:
    忙しいの?

    米良柊子:
    ちょっとね、高島教授があんなことになっちゃったから、その分の作業もしなくちゃいけないの。
    それに、新しいクライアントも増えるし。

    岩倉玲音:
    研究のできる?

    米良柊子:
    玲音、そんなに気を使わないで。
    新しい室長が来るまで、ちょっと大変だけど、すごくやりがいがあるの。
    今は、仕事のことだけ考えているのが幸せなの。

    米良柊子:
    寂しくない?

    岩倉玲音:
    玲音も、きっといつかわかるわ。
    仕事が充実するって、本当に素晴らしいことよ。

    岩倉玲音:
    私には多分、わからない。
    そんなことよりも・・・。

    米良柊子:
    そんなことよりって・・・何?
    玲音にも何か楽しいことあったの?

    岩倉玲音:
    うん、全てがうまくいきそうなの。

    米良柊子:
    何が?

    岩倉玲音:
    私のこと。

  • Cou031:

    chief of bureau-patient-close

    Cou.031chief of bureau - patient - close

    米良柊子:
    特になし。
    管理事務局長様。
    新しいクライアント、ありがとうございます。
    現在のクライアントの状態は報告の通りです。
    最終レポートをまとめ次第、お送りいたしますので、問題なければカウンセリングを終了したいと思います。

  • Cou041:

    misato-therapy-father

    Cou.041misato - therapy - father

    米良柊子:
    ねえ玲音、確認したいんだけど、あなたが前に話していた友達って、なんて名前だったっけ?

    岩倉玲音:
    今日子ちゃん。

    米良柊子:
    あ、そう、今日子ちゃんと・・・あともう1人。

    岩倉玲音:
    美里ちゃん?

    米良柊子:
    そう、美里ちゃんって言ったわよね。

    岩倉玲音:
    なんでそんなことを聞くの?

    米良柊子:
    いいの、気にしなくて。
    玲音のレポートをまとめていたら、友人関係って欄があって、先生見直していたら自信がなくなっちゃったの。それで確認したかっただけ。

    岩倉玲音:
    そう。
    美里ちゃんも、カルテに載るの?

    米良柊子:
    名前だけよ、深い意味はないわ。
    そんなことよりも、美里ちゃんて近所なの?

    岩倉玲音:
    そう。近所だけど、歩いてはいけない。

    米良柊子:
    車で行かないといけない?

    岩倉玲音:
    うん、美里ちゃんのうちに行く時は、いつもお父さんかお母さんに、車で送ってもらうの。

    米良柊子:
    お父さんは今、何してるの?

    岩倉玲音:
    お仕事で出張に行ったり。戻ってきても、あんまり家にいないよ。

    米良柊子:
    忙しいんだね。
    お父さんは優しい?

    岩倉玲音:
    優しいよ。
    出張に行くたびに、お土産買ってくれるの。

    米良柊子:
    良かったね、玲音。