Data - Cou

make me sad,
make me mad,
make me feel
alright?

Data

Cou

  • Cou001:

    obstacle-black tea-kind

    Cou.001obstacle - black tea - kind

    米良柊子:
    それでは、お母さんはそちらの控室でお待ちください。
    玲音ちゃん、心配ないからね。
    さあ、そこに座って。
    ジュースかなんか飲むもの欲しい?
    そんなに緊張しなくてもいいのよ。
    ・・・そうだな、先生は喉が渇いたから、紅茶を飲みたいんだけど、玲音ちゃんも付き合ってくれない?
    だって先生だけ飲んでると、変でしょ?
    ・・・ありがと。それじゃあ何がいい?とりあえず色々あるけど。

    岩倉玲音:
    おんなじで。

    米良柊子:
    紅茶でいいの?わかった。じゃあ、ちょっと待っててね。
    はい、お砂糖とミルクは自分で入れてね。
    はーい、どうぞ。
    ・・・うーん、まずまずかな。
    これね、アールグレイってお茶で、先生はこの紅茶が大好きなの。

    岩倉玲音:
    アールグレイ?

    米良柊子:
    そう紅茶にもね、種類があって、香りとか味とか違うものなの。

    岩倉玲音:
    美味しい?

    米良柊子:
    うーん、そうね。私にはいいかもしれないけど、玲音ちゃんにはどうかなぁ?
    試しにちょっと飲んでみればいいのよ。
    もし美味しくなかったら、他のものにすればいいんだから、ね?ほら。

  • Cou002:

    milk-dislike-consultation

    Cou.002milk - dislike - consultation

    岩倉玲音:
    いいにおーい。

    米良柊子:
    さあどうぞ。
    ・・・どう?あれ、あんまり美味しくなかったみたいね、苦い?お砂糖入れる?
    あ・・・じゃあミルクを入れたら、苦味がなくなっていいかもしれないわ。
    それとも他のにする?

    岩倉玲音:
    牛乳は嫌い。

    米良柊子:
    ・・・そうなんだ。ごめんね、先生知らなかったから。
    じゃあ・・・なんか、ジュースでも持ってこようか?
    ・・・ごめんね。そうだね、先生も12歳の頃に紅茶なんて飲まなかったかも。
    「紅茶には種類がいっぱいある」って言ったでしょ?私もダメなのはダメなの。
    もちろん飲めないわけじゃないけど、相性っていうか、単なる好き嫌いとか、種類によって出ちゃうのよねぇ。
    玲音ちゃんは好き嫌いは?あっ・・・牛乳は何で嫌いなの?

    岩倉玲音:
    お腹がゴロゴロするの。

    米良柊子:
    フフッ・・・アハハ。実はね、先生も昔そうだったの。
    だから学校の給食で牛乳が出るとね。
    今は大丈夫だけど。

    岩倉玲音:
    ・・・本当は好きなのに。

    米良柊子:
    お腹に優しい牛乳でも、ダメ?

    岩倉玲音:
    なんて牛乳?

    米良柊子:
    名前は忘れちゃったけど、お腹がゴロゴロしない牛乳もあるのよ。
    玲音ちゃんとか、昔の私のような子のためにね。
    お母さんに相談すれば、きっと探してくれるわよ。

  • Cou003:

    individuation-boast-advice

    Cou.003individuation - boast - advice

    岩倉玲音:
    牛乳にも、種類があるの?

    米良柊子:
    そうね、基本的には同じものなんだけど、加工の仕方によって、違う種類になるの。

    岩倉玲音:
    違う種類?

    米良柊子:
    うん、紅茶もね、葉っぱの積み方や蒸らし方で種類が違うのよ。
    同じ葉っぱでもね。

    岩倉玲音:
    人間も?

    米良柊子:
    えっ?

    岩倉玲音:
    人間は、種類があるの?

    米良柊子:
    ・・・そうだね。種類っていうより、人は一人一人違うのよ。
    例えば、玲音ちゃんは紅茶が嫌いだけど、私のように好きな人もいる。
    牛乳を飲んでお腹が痛くなる人もいるし、そうじゃない人もいるでしょ?
    でも、同じ人間でも私みたいに、大きくなったら平気になっちゃう人もいるの。
    ひょっとしたら、玲音ちゃんも平気になるかも。
    ね?いいことでも悪いことでも、何でもないのよ。
    人と違うことなんて当たり前のことなの。
    全然気にしなくていいのよ?むしろ誇りに思ってもいいくらいのことだわ。

    岩倉玲音:
    誇り・・・。

    米良柊子:
    ・・・ごめんなさい。そうよね、玲音ちゃんは悩んでるんだもんね。
    自慢するとかじゃなくて「気にする必要なんか全然ない」って言いたかったの。

    岩倉玲音:
    私は、変な夢見るから、違っているの?

    米良柊子:
    「違ってるかもしれない」ってことなの。
    普通のことなのかもしれないわ。
    私は玲音ちゃんがそれを気にしているんなら、何か役に立てるかもしれないから、ここにいるの。
    夢を見ないようにすることじゃなくて、玲音ちゃんがそのことで、何かわからないこととか困ったことがあったら、相談してくれると嬉しいな。
    先生はね、そういう相談に答える勉強いっぱいしてきて、今も勉強してるの。
    玲音ちゃんは困ってなんていないかもしれないけど、もしそうだとしたら先生にちょっと付き合って、おしゃべりしてくれるだけでいいの。
    先生はね玲音ちゃんのこと、もっと知りたいの、ダメかな?
    ・・・あはっ、嬉しい。
    今日から玲音ちゃんと先生は友達よ。
    遊びに来て、約束よ?

    岩倉玲音:
    私も、先生からいろんなお話聞きたい。

    米良柊子:
    うん、何でも聞いて。わかんないことがあっても調べるから。
    それから玲音ちゃんの好きな物も用意しとく。

    岩倉玲音:
    なあに?

    米良柊子:
    お腹の痛くならない牛乳。
    ふふっ。

  • Cou004:

    desire-investigation-relax

    Cou.004desire - investigation - relax

    米良柊子:
    7月8日午後2時2回目のセッション。
    はい、お願いします。

    岩倉玲音:
    柊子先生、こんにちは。

    米良柊子:
    こんにちは、玲音ちゃん。

    岩倉玲音:
    こんにちは。

    米良柊子:
    夏休みももうすぐ。
    楽しみだね。

    岩倉玲音:
    別に。

    米良柊子:
    えっと。
    今日はね、玲音ちゃんと一緒に簡単なゲームをしようと思って、これ持ってきたんだ。

    岩倉玲音:
    なあに?それ。

    米良柊子:
    お絵かきセット。玲音ちゃんは絵は好き?

    岩倉玲音:
    好きじゃない・・・多分。

    米良柊子:
    そう、残念。・・・あ、じゃあね、マルバツって知ってる?

    岩倉玲音:
    知ってるけど、やりたくないよ。

    米良柊子:
    うーん、ごめんね。
    なんか先生外しちゃってるね。
    じゃあ・・・玲音ちゃんが何かやりたいことってある?

    岩倉玲音:
    もっとお話を聞かせてほしい。

    米良柊子:
    お話・・・何の話をすればいい?

    岩倉玲音:
    何でもいい。柊子先生のこと。

    米良柊子:
    先生のこと?・・・そうねぇ、そんなに面白くないわよ?

    岩倉玲音:
    嫌?

    米良柊子:
    ううん、嫌じゃないよ。でもほら、先生は27年も生きちゃって、いっぱいお話があってね。
    すっごく昔のことから話すと長くなるのよ。
    それにそんなにすごい話もないけど。

    岩倉玲音:
    先生は何の先生なの?

    米良柊子:
    んー、先生はそうだな・・・玲音ちゃんみたいに、何か悩み事がある人の話を聞いて、こうしたらよくなるんじゃないかってアドバイスしたりする先生なの。
    わかる?

    岩倉玲音:
    やっぱり・・・そうなんだ。

    米良柊子:
    ・・・どうしたの?もし気分が悪くなったり、何か嫌なことがあったら正直に言っ?。
    先生も気をつけるけど。
    そう、そんなに深く考えなくていいのよ。
    リラックスして、先生と月1回こうして楽しくお話をするだけでいいの。

    岩倉玲音:
    うん・・・。

  • Cou005:

    friend-secret-doll

    Cou.005friend - secret - doll

    米良柊子:
    そうだ、学校は楽しい?

    岩倉玲音:
    普通。

    米良柊子:
    普通って?面白くもつまんなくもない?

    岩倉玲音:
    うん・・・。

    米良柊子:
    友達は?

    岩倉玲音:
    いるよ。

    米良柊子:
    友達とよく遊ぶの?

    岩倉玲音:
    うん。
    でも、みんな塾とかお稽古で忙しいの。
    私はここぐらいだから。

    米良柊子:
    何か習ったりしたくないの?お習字とか、スイミングスクールと・・・あぁ。

    岩倉玲音:
    いいよ、そんなに気を使わなくても。

    米良柊子:
    ・・・ごめんなさい、先生カウンセラー失格だね。

    岩倉玲音:
    何かお稽古をするよりも、お家にいる方がいいの。

    米良柊子:
    お家で何をしてるの?

    岩倉玲音:
    秘密。

    米良柊子:
    あー!ずるいなぁ、教えてくれないんだ?

    岩倉玲音:
    だって、恥ずかしい。

    米良柊子:
    恥ずかしいことしてるの?

    岩倉玲音:
    多分。
    米良柊子:
    うーん、気になるなぁ。
    ま、いっかぁ。
    でもなんだろうなぁ。
    気になるなぁ。

    岩倉玲音:
    言わなきゃダメ?

    米良柊子:
    話してくれると嬉しいな。

    岩倉玲音:
    ・・・ぬいぐるみさんたちとお話をするの。

    米良柊子:
    なぁーんだ、全然普通じゃない!先生はてっきり・・・。

    岩倉玲音:
    てっきり?

    米良柊子:
    う・・・ふふふっ、なーんでもないの。
    先生もお気に入りのぬいぐるみあったっけ。

    岩倉玲音:
    何のぬいぐるみ?

    米良柊子:
    銀行でもらった龍のぬいぐるみなの。変でしょ?

    岩倉玲音:
    なんで変なの?

    米良柊子:
    だって女の子だったら、もっと可愛い動物のぬいぐるみを集めるじゃない?
    それに、それは本当はぬいぐるみじゃなくて、貯金箱だったの。
    でもすっごく大事にしてたんだぁ。
    たっちゃんって呼んで話しかけてね。

    岩倉玲音:
    私も、話してる・・・普通?

    米良柊子:
    普通よー。
    玲音ちゃんは先生が普通じゃない人に見える?

    岩倉玲音:
    ううん。

    米良柊子:
    そう。
    玲音ちゃんもおんなじ。
    変な子じゃないのよ

  • Cou006:

    be tired-state-individuality

    Cou.006be tired - state - individuality

    米良柊子:
    こんにちは、玲音ちゃん。
    元気だった?

    岩倉玲音:
    うん。
    先生は?

    米良柊子:
    先生はもちろん元気よ。
    ちょっと疲れてるけど。

    岩倉玲音:
    疲れてるの?

    米良柊子:
    そうね。これでも結構忙しいのよ?

    岩倉玲音:
    どのくらい?

    米良柊子:
    うーんそうだなぁ・・・こうやって玲音ちゃんとゆっくりお話しするのが唯一の楽しみなくらい、かな。

    岩倉玲音:
    本当?

    米良柊子:
    ホントよ。
    今日は何の話をしようか?玲音ちゃんは何を話したい?

    岩倉玲音:
    先生のこと。
    先月はあんまり聞けなかった。

    米良柊子:
    うーん、先生の話なんかより、玲音ちゃんの話が先生は聞きたいんだけど・・・そうね、一方的に聞くのも、平等じゃないわね。
    私が話したら、今度は玲音ちゃんの番よ?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    何から話せばいいのかわからないけど・・・。
    米良柊子、27歳、東京都世田谷区生まれ、立花総合研究所精神病理研究室ドクター・・・こんなとこよ?はぁ、これじゃあ話になんないよね。
    先生はね、人の話を聞くのは慣れてるんだけど、自分のこと話すのはあまり得意じゃないのよ。
    玲音ちゃんの聞きたい事ってなんかある?

    岩倉玲音:
    どうやって先生になったの?

    米良柊子:
    うん、大学ってところでいっぱい勉強して、論文っていうものを書いて、それが認められると博士号が貰えて、それで先生になれるの。

  • Cou007:

    study-simplicity-exercise

    Cou.007study - simplicity - exercise

    岩倉玲音:
    大学ってどんなところ?

    米良柊子:
    玲音ちゃんは、今中学生よね?そこでもっと勉強したい人は高校へ行くでしょ?それでもまだ勉強したい人が行くところが、大学なの。

    岩倉玲音:
    先生は勉強が好きなの?

    米良柊子:
    昔は嫌いだったなぁ。
    でも中学の時にアメリカに留学して、ちょっと考えが変わったかな。

    岩倉玲音:
    留学してたの?すごーい!

    米良柊子:
    その頃は先生も親に勧められて行っただけなの。
    ただ外国って、日本と考え方や価値観も違っていて、すごく勉強になったの。
    今思うと大変だったし、初めは不安だらけだったけど、今は留学させてもらったことを感謝してるぐらい。
    それと、英語の勉強にもなったしね。

    岩倉玲音:
    すごいんだ、柊子先生。

    米良柊子:
    そんなことないよ。
    先生よりももっと勉強してる人なんて、いっぱいいるわよ。
    先生はどっちかといえば怠け者で、割と遊んでたかな。
    だって勉強だけだとつまんないでしょ?玲音ちゃんは勉強好き?

    岩倉玲音:
    あんまり好きじゃない。

    米良柊子:
    どの教科が嫌いなの?

    岩倉玲音:
    体育と国語。

    米良柊子:
    そっかぁ。
    玲音ちゃんは運動が嫌いなのね?

    岩倉玲音:
    違うの、体育が嫌いなの。

    米良柊子:
    運動は好き?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    何の運動が好きなの?

    岩倉玲音:
    鉄棒。

    米良柊子:
    すごい。
    先生は走るのは得意だったけど、鉄棒はちょっとダメだったなぁ。
    ぐるぐる回ると目が回っちゃってダメなのよ。

    岩倉玲音:
    私、ぐるぐる回るの好きだよ。

    米良柊子:
    前転も後転も?

    岩倉玲音:
    どっちも好き。

    米良柊子:
    で、何が嫌いなの?

    岩倉玲音:
    ・・・。

    米良柊子:
    あっ、答えたくないんだったら、別にいいんだよ?
    それより玲音ちゃんの好きなお勉強は?
    ・・・ごめんなさい、疲れた?
    今日はちょっと早いけど、終わりにしようか。

  • Cou008:

    worry-action-feeling

    Cou.008worry - action - feeling

    米良柊子:
    この間はごめんね。
    でもよかったぁ、先生嫌われちゃって、もう玲音ちゃん来てくれないかなって、心配してたの。

    岩倉玲音:
    ごめんなさい。

    米良柊子:
    玲音ちゃんが謝る必要なんて、全然ないのよ。
    悪いのは質問攻めにした先生。
    ・・・許してくれる?
    ふふっ、ありがとう。
    それでね、今日はちょっとこの絵を見て話をしようかな、っと思ってるんだけど。

    岩倉玲音:
    それ、前の病院でやった。

    米良柊子:
    そう?でも、先生もこれで遊びたいの。

    岩倉玲音:
    何かのテストなんでしょ?

    米良柊子:
    すごいわね、玲音ちゃん、知ってるの?これはねロールシャッハテストっていうのよ。
    別に、これで何がテストできるってわけじゃないの。
    ちょっとしたお遊びって思ってくれればいいのよ。

    岩倉玲音:
    でも、つまんない。

    米良柊子:
    うーん、そうね。
    つまんなかったら、そこでやめにしましょう。
    それならいい?

    岩倉玲音:
    ・・・うん。

    米良柊子:
    じゃあね、これ、何に見える?

    岩倉玲音:
    シミ。

    米良柊子:
    う・・・そうね。
    でも何かに例えるとしたら?

    岩倉玲音:
    先生は何に見えるの?

    米良柊子:
    先生?そうねぇ・・・人の顔かなぁ?。

    岩倉玲音:
    怒ってる?それとも泣いてる?

    米良柊子:
    ちょっと怒ってるかな。

    岩倉玲音:
    つまんないよ。

    米良柊子:
    うーん・・・はぁ・・・そう。
    約束よね、やめましょう。

  • Cou009:

    body-melancholy-Nega feelings

    Cou.009body - melancholy - Nega feelings

    米良柊子:
    何か楽しい話をしよっか。
    玲音ちゃんは、お風呂とシャワー、どっちが好き?

    岩倉玲音:
    シャワー。

    米良柊子:
    そう。
    先生は、お風呂の方が好きだなぁ。
    でも先生のうちってユニットバスだから、お風呂だと結構めんどくさいのよ。
    毎日遅くに帰ってから、お風呂の支度するのがめんどくさくて、ついついシャワーで済ましちゃうんだけど、おやすみの日は必ずお風呂にするの。
    お風呂に入ると体中が温まるし、気持ちよくならない?

    岩倉玲音:
    お湯の中が怖いの。

    米良柊子:
    溺れちゃいそうで?

    岩倉玲音:
    違うよ。

    米良柊子:
    じゃあ何が怖いの?

    岩倉玲音:
    よくわからない。
    でも、体に何かが触れてるみたいだから。

    米良柊子:
    それは、お湯は少なくとも肌に触れてるけど。

  • Cou010:

    sLf-persecution-imagination-understanding

    Cou.010sLf-persecution - imagination - understanding

    岩倉玲音:
    私、変だから。

    米良柊子:
    ちょっと待って玲音ちゃん。
    玲音ちゃんは、全然変な子じゃないのよ。
    子供の頃ってみんなそうなの。
    天井の木の模様が人の目に見えたり、想像力が旺盛な子だったら、みんなそういう経験は持ってるのよ。

    岩倉玲音:
    でも違う。

    米良柊子:
    玲音ちゃんは、人と違う自分って嫌い?

    岩倉玲音:
    よくわからない。

    米良柊子:
    いい?人と違うから玲音ちゃんなのよ。
    玲音ちゃんはとっても想像力があって、それはね、すごくいいことなの!だから自分のこと変な子なんて言っちゃダメ。
    先生は全然そんなこと思ってないよ。

    岩倉玲音:
    でも、テストした。

    米良柊子:
    ・・・ごめんなさい。
    でもね・・・レインちゃんは困ってるんだよね?
    先生は、玲音ちゃんを困らなくていいようにしてあげたいの。
    それにはね玲音ちゃんのこと、いろいろ知らなくちゃいけないの。
    でも玲音ちゃんが嫌がることはしたくない。
    玲音ちゃんの困っていることを解決するために、先生ができるのは、手助けだけなの。
    玲音ちゃんのことは玲音ちゃんにしかわからないでしょ?玲音ちゃんが自分で解決するしかないの。
    先生が手助けするにも、玲音ちゃんの協力が必要なの。

    岩倉玲音:
    私は何をすればいいの?

    米良柊子:
    今は何もしなくていいわ。
    先生と玲音ちゃんは友達なんだから、ゆっくりゆっくり一緒に話をしていけば、玲音ちゃんのこと色々分かってくるから。
    そしたら、先生が「こうした方がいいんじゃないか」って言うから、玲音ちゃんがそれを聞いて「そうした方がいいかなー」って思ったら、そうしてくれればいいの。
    だから今は玲音ちゃんのことを、先生にいっぱい教えてくれたらいいな。

    岩倉玲音:
    柊子先生は、誰にも言わない?

    米良柊子:
    うん。
    玲音ちゃんと私の秘密だもの。

    岩倉玲音:
    友達にもお母さんにも?

    米良柊子:
    うん、約束する。
    嘘ついたら針千本。

    岩倉玲音:
    ハリセンボン・・・?

    米良柊子:
    あっ・・・玲音ちゃんたちは知らないか。
    先生たちが子供の時は約束するとき、「約束を破ったら、針千本飲みますよ」って約束してたの。

    岩倉玲音:
    痛い?

    米良柊子:
    痛いよぉー、先生なんて5回も飲まされたんだから。
    はい、先生のお腹には今何本針が入ってるでしょう、岩倉さん?

    岩倉玲音:
    5000本。

    米良柊子:
    残念でした。
    昨日トイレに行って、全部出しちゃったので、0本でした!

    岩倉玲音:
    先生汚い。

    米良柊子:
    あはっ!あははは・・・。

  • Cou011:

    impossible-laboratory-psychiatrist

    Cou.011impossible - laboratory - psychiatrist

    米良柊子:
    こんにちは、玲音ちゃん。

    岩倉玲音:
    ・・・こんにちは。

    米良柊子:
    あれ、ちょっと元気がないね。
    気が乗らないって感じ?
    ・・・うん、今日はやめよう!ね?
    せっかくここまで来たんだから、お茶していきなさい。
    何がいい?気にしなくていいのよ?

    岩倉玲音:
    やる。

    米良柊子:
    ふふ・・・無理なんかしちゃダメ。
    そういう無理は余計にいけないんだから。
    先生の言うことは素直に聞いてほしいんだけどなぁ。

    岩倉玲音:
    私、治りたい。

    米良柊子:
    治るって、玲音ちゃんは病気じゃないのよ?

    岩倉玲音:
    ここって病院なんでしょ?

    米良柊子:
    病院の機能も持ってるわ。
    実際私の研究室でも患者さんを持ってるの。
    でも、玲音ちゃんはまだどっちともわからない状態。
    先生は多分、玲音ちゃんは病気なんかじゃないと思っている。
    ただ、玲音ちゃんが不安に思ったり、それで悩んでいるんだったら、助けてあげたいのよ。

    岩倉玲音:
    私、病気じゃない?

    米良柊子:
    今は、まだ答えられないわ。
    でも多分大丈夫。
    もし病気だとしても、先生が治るようにしてあげる。

    岩倉玲音:
    絶対?

    米良柊子:
    絶対に玲音ちゃんを病人になんてさせない!。

    岩倉玲音:
    先生は、なんで玲音にそんなに優しくしてくれるの?お仕事だから?

    米良柊子:
    そうね、確かにこれも仕事よ。
    でも仕事として割り切れる部分と、そうじゃない部分がいっぱいあるお仕事なの。
    ただ客観的に診断して、精神療法をしているだけじゃ治らないケースがほとんどなの。
    先生は研究者でもあり、お医者さんでもある。
    目の前に困ってる人がいたら、助けずにはいられないのよ。
    そのためには、できるだけのことをしたいの。

    岩倉玲音:
    誰にでもそういう風にするの?

    米良柊子:
    詳しく言うと、例えば何か原因がはっきりしている人の場合、その分野の専門の先生にバトンタッチすることもあるわ。
    例えば事故にあったり、薬物中毒だったりした場合。
    簡単に言うとね、体のどこかが壊れちゃったかもしれない人たち、それは先生には直せないのよ。

    岩倉玲音:
    私は?

    米良柊子:
    精密検査をしてみないと何とも言えないけど、私に会う前に検査をしたでしょ?その範囲では全く問題はないわ。
    それにこうやって、玲音ちゃんとお話をしてても全然玲音ちゃんは問題なさそうなの。
    ただ、まだ玲音ちゃんの話をいっぱい聞かせてもらったりしないと、玲音ちゃんが問題にしていることを解決できそうもないの。

  • Cou012:

    psychosis-imagination-danger

    Cou.012psychosis - imagination - danger

    岩倉玲音:
    私が問題にしてることって・・・怖い夢を見ること?変なものが見えること?何も触れてないのに何かに触られてるって感じること?
    ・・・精神分裂病の症状?

    米良柊子:
    どうして、そんな言葉知ってるの?誰がそんなこと言ったの?

    岩倉玲音:
    本で調べたの。

    米良柊子:
    玲音ちゃん、勉強熱心なのはいいことよ。
    でも病気でもないのに、あれこれ自分で病気を想像してしまうのは、とっても危険なことなの。
    ほら、病は気からって言うでしょ?

    岩倉玲音:
    そんな言葉、知らない。

    米良柊子:
    あぁ・・・そう。でも、とにかくそういう風にしてると、自分が病気だって信じ込んじゃうの。

    岩倉玲音:
    でも、知りたかったの。
    自分がどうなっているかって。

    米良柊子:
    そうね、よくわかるわ。
    玲音ちゃんは正しいと思うよ。
    でも、これは先生からのお願い。
    玲音ちゃんが治したいって思うなら、変に考え込んで詮索したり・・・あぁ、調べたりしないこと。
    お願いできる?

    岩倉玲音:
    先生は教えてくれる?

    米良柊子:
    もちろんよ。
    じゃあ、今約束しよう。
    先生は玲音ちゃんに全て教えます。
    隠し事は一切しません。

    岩倉玲音:
    嘘・・・ついたら針千本?

    米良柊子:
    うーん、もっとすごいことだっていいよ。
    頭で釘打っちゃったり。

    岩倉玲音:
    変な先生。

    米良柊子:
    あっはは。
    でもね、本当に先生は玲音ちゃんの力になってあげたいの。
    先生は一人っ子だから、玲音ちゃんみたいな妹が欲しかったんだ。

    岩倉玲音:
    じゃあ、先生は玲音のお姉ちゃん?

    米良柊子:
    うん、玲音ちゃんがそう思ってくれると嬉しいな。

    岩倉玲音:
    うん!

    米良柊子:
    ありがとう。
    でも、今日はとにかく終わりにしよう!
    玲音ちゃんも疲れたでしょう。

    岩倉玲音:
    ううん。
    でも先生の言う通りにする。

    米良柊子:
    よし、その調子!なーんちゃって、実は先生が疲れてたりしてね。

    岩倉玲音:
    玲音は、疲れる?

    米良柊子:
    あ、違う違う!他のお仕事が結構忙しいの。
    もう玲音ちゃんに会える時が待ち遠しいくらいよ?

    岩倉玲音:
    良かった。

    米良柊子:
    それじゃあ、あんまり遅くなるとお母さんが心配しちゃうから。

    岩倉玲音:
    さようなら、柊子先生。

    米良柊子:
    さようなら、玲音ちゃん。

    岩倉玲音:
    玲音でいいよ。
    だって妹にちゃん付けするなんて、変だよ?

    米良柊子:
    そっか。
    それじゃ、さようなら、玲音。

    岩倉玲音:
    さようなら。

  • Cou013:

    A.hallucination-sky-technology

    Cou.013A.hallucination - sky - technology

    岩倉玲音:
    こんにちは、柊子さん。

    米良柊子:
    こんにちは、玲音。
    さあ、今日から本格的に玲音ちゃんの・・・あっ、玲音が怖い夢を見ないように、色々調べるからね。

    岩倉玲音:
    うん。でも、この頃見ないよ。
    聞こえる時はあるけど。

    米良柊子:
    聞こえる?何が?

    岩倉玲音:
    わからないの。
    話し声みたいな。
    あんまり聞きたくないから、気にしないようにしてる。

    米良柊子:
    ふーん・・・玲音はその声が誰かわからない?

    岩倉玲音:
    わからない。
    男の人だったり、女の人だったり。

    米良柊子:
    じゃあ、どこから聞こえてくる感じがする?

    岩倉玲音:
    空。

    米良柊子:
    空?
    あー、空の、どのあたり?

    岩倉玲音:
    電線、なんとなく。

    米良柊子:
    電線から・・・そう。
    玲音は電線の中身って知ってる?

    岩倉玲音:
    銅線とか、電気が伝わるもの?

    米良柊子:
    そう。
    発電所でできた電気を送る道よ。
    電気みたいな感じがするの?

    岩倉玲音:
    よくわからない。
    時々電線じゃなくて、空から聞こえる気もする。

    米良柊子:
    でも、今は気にならない?

    岩倉玲音:
    大丈夫、だって怖くないもん。
    ただ・・・。

    米良柊子:
    お母さんに話したら、「誰にもそんなこと言っちゃいけない」って言われた?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    そうね。
    聞こえない人には「変なこと言う子」って言われるもんね。
    でもね、先生には言ってもいいのよ。
    安心して。
    先生は玲音のこと、変だなんて思わないから。

    岩倉玲音:
    病気だから?

    米良柊子:
    玲音・・・違うわ。
    そうね、金縛りって知ってるよね?

    岩倉玲音:
    お化けが出て、体が動けなくなること?

    米良柊子:
    そう。
    玲音はなったことある?

    岩倉玲音:
    何度もあった。

    米良柊子:
    怖かったでしょ?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    なんでそうなるかって知りたい?

    岩倉玲音:
    なんでなの?

    米良柊子:
    簡単に説明するとね、人間の体ってとっても不思議で、寝ている時に頭が起きている時と体が起きている時とがあるの。
    わかる?

    岩倉玲音:
    なんとなく。

    米良柊子:
    それでいいわ。
    じゃあ、今玲音はどうなっている?

    岩倉玲音:
    どっちも起きている。

    米良柊子:
    うん。
    今、先生が怖い話をして、玲音は逃げ出したいくらい、怖い目に遭いました。
    どうする?

    岩倉玲音:
    逃げると思う。

    米良柊子:
    でね、そんな時に体が眠っていて動けない。
    これが金縛り。
    つまりね、怖い夢を見て逃げたいのに、体が眠っているから動けなくなるの。
    ね?仕組みがわかると怖くないでしょ?

    岩倉玲音:
    うん、怖くない。

  • Cou014:

    needless-sensitivity-diary

    Cou.014needless - sensitivity - diary

    米良柊子:
    金縛りにあったって人はいっぱいいるわ。
    その人のことを病気だなんて言わないでしょ?

    岩倉玲音:
    でも・・・。

    米良柊子:
    そうね、玲音と同じ経験をしている人は少ないかもしれない。
    だからって言って病気であるとは言えないわ。
    感受性が強い子供の頃って、特に色んなことが起こるの。

    岩倉玲音:
    でも・・・怖いし、嫌。

    米良柊子:
    何がその夢で怖い?

    岩倉玲音:
    自分がいらないような気になるの。
    自分がいらないものだって。

    米良柊子:
    自分がいらない?

    岩倉玲音:
    いらないから戻って来いって・・・言われてる気がするの。

    米良柊子:
    戻るって、どこに?

    岩倉玲音:
    私に。

    米良柊子:
    うーん、よくわからないなぁ。
    自分が自分に「戻れ」って言うわけ?

    岩倉玲音:
    わからない。
    けど、私みたいな私が私の体を触って・・・引きちぎるみたいに。

    米良柊子:
    痛い?

    岩倉玲音:
    痛くない。けど・・・怖い。

    米良柊子:
    そう。
    それは寝てる時?

    岩倉玲音:
    多分。

    米良柊子:
    多分?夢じゃない時もあるってこと?

    岩倉玲音:
    わからない。
    一人でぼんやりしていたり、お友達と話していた時にもなった。

    米良柊子:
    一人じゃない時のことを聞かせて?
    普通に話しててそうなった?

    岩倉玲音:
    うん。
    普通に話していたら、急に。

    米良柊子:
    どうして気がついたの?友達に声かけられて?

    岩倉玲音:
    いつの間にか。

    米良柊子:
    何か、きっかけみたいなものってなかった?

    岩倉玲音:
    怖くて、じっとしていたら治ったの。

    米良柊子:
    それじゃあ、どんな様子だったか説明してくれるかな?絵とか描ける?

    岩倉玲音:
    ううん、描けない。

    米良柊子:
    そっか・・・あ、もうこんな時間だわ。
    ごめんね、玲音。
    先生、今日出かけなくちゃいけないの。
    ごめんね、中途半端になっちゃって。
    でも、今は見えないなら、とりあえずはいいわよね。
    多分、金縛りみたいなことだと思うから、来月までに先生も調べておきます。
    これは先生の宿題ね。
    玲音の宿題は、「日記をつけること」。

    岩倉玲音:
    日記?

    米良柊子:
    自分が今日何をして、どんなことを考えたか書くこと。
    別に先生に見せなくても構わないから、自由にね。
    先生も玲音ぐらいの頃、日記をつけてたんだ。

    岩倉玲音:
    でも・・・。

    米良柊子:
    嫌?
    でも振り返って読むと、結構面白いものだし、人って忘れっぽいからメモ代わりにでもつけとくと、いいわよ?

    岩倉玲音:
    それで治るの?

    米良柊子:
    うーん・・・あんまり関係ないかもしれないけど、少なくともプラスにはなるわ。
    来月、詳しく説明する。
    もし嫌だったら構わないけど、一応ね、買ってきたの。
    ほら、結構可愛いでしょ?先週お買い物に行ったら見つけちゃって、玲音にプレゼントしたいなーって思って。

    岩倉玲音:
    ありがとう。

    米良柊子:
    ふふっ。
    でも、無理しなくてもいいのよ。
    「買ってあげたんだから書きなさい」なんて言わないから。
    玲音が日記をつけたくなったら、つけてくれればいいわ。
    さ、もう行かないと。
    忘れ物はない?一緒に門のとこまで行こっか。

  • Cou015:

    complaint-ego-special

    Cou.015complaint - ego - special

    米良柊子:
    調子はどう?玲音。

    岩倉玲音:
    別に・・・大丈夫だよ。
    柊子さんは?

    米良柊子:
    うん、相変わらずってとこね。
    もうちょっと落ち着いて考える時間が欲しい、ってとこかな。

    岩倉玲音:
    忙しいの?

    米良柊子:
    うん、ちょっとね。
    あはっ。これじゃあ、立場が逆ね。
    玲音にカウンセリングしてもらってるみたい。
    あ、ところで日記はどうすることにした?

    岩倉玲音:
    うん、つけることにした。

    米良柊子:
    そう!よかった、給料日前の出費が無駄にならなくて済んだわ。

    岩倉玲音:
    お金払うよ。

    米良柊子:
    嘘よ、冗談。
    これでも先生は結構もらってるんだから。
    ま、時給に治したら安すぎる気もするけど。
    いっけなーい、自分の愚痴ばっかだよね。

    岩倉玲音:
    でも先生おかしい。
    なんか楽しい。

    米良柊子:
    ふふふっ。
    さあ、始めましょうか。
    この間の続きなんだけどね、自我って言葉、学校で習ったりした?

    岩倉玲音:
    うん、前に調べた時に覚えた。
    自分が自分であるって認識すること?

    米良柊子:
    そう。
    玲音たちの年頃には、それが結構不安定になることがあるの。
    「自分って一体何者なんだろう」ってね。
    男の子とかだと、「実は自分はヒーローで、いつか力に目覚めて大活躍する」とか、女の子だったら、「実は私は今のうちの子じゃなくて、本当はさる財閥の令嬢で白馬に乗った王子様が執事と共に迎えに来る」とか、本気で信じちゃったり。

    岩倉玲音:
    私はそんな風に思ってないよ。
    私は私だもの。

    米良柊子:
    でも、自分のことって、意外に自分ではわからないものじゃないかしら。
    先生も昔は、ホントはもっと違う自分がいて、今の私は違ってるって思ってた時があったけどなぁ

    岩倉玲音:
    違う自分?

    米良柊子:
    そうね。
    例えば嫌なこととかあった時に、「なんで私がこんな目に遭うのか?何か間違ってる!」って思ってた。
    いつか真実の自分に帰れるような気がしてね。
    それとね地震が起こっても、私だけは助かっちゃうとか。
    どこかで自分は特別で選ばれた存在なんじゃないかなって思ってたの。
    つまり、ありもしない自分を想像してたの。
    ふっ、おかしいでしょ?

    岩倉玲音:
    私は選ばれた人だなんて思ってないよ。
    普通でいいんだもの。

  • Cou016:

    elusion-deny-fiction

    Cou.016elusion - deny - fiction

    米良柊子:
    そうね、それは多分・・・玲音が強い子だからよ。
    先生は弱かったの。
    それで、そう思うことで逃げてたんだと今は思ってる。

    岩倉玲音:
    私も、自分から逃げてる?

    米良柊子:
    そうは思わないわ。
    ただ、自分を変えたいって思ってるでしょ?

    岩倉玲音:
    変な夢を見なくしたいだけ・・・だと思う。

    米良柊子:
    ひょっとしたらだけど、玲音は「変な夢を見る自分が嫌だ」って心のどこかで思ってるから、それが無意識に自分じゃない自分を作り出してるのかなーって思ったの。

    岩倉玲音:
    どうすればいいの?私。

    米良柊子:
    そうね、変な夢も全部受け止めるってできるかなぁ?

    岩倉玲音:
    受け止める?

    米良柊子:
    そう。
    聞きたくない声も、会いたくない自分も、しっかり見てみる。
    そいつらと仲良くなるの。

    岩倉玲音:
    できないよ。

    米良柊子:
    声に耳を傾けるだけでいいと思うわ。
    何を言ってるのか、どうしたいのか。
    玲音が納得できるまで、その正体を暴くの。

    岩倉玲音:
    怖い、私。

    米良柊子:
    でも、今まで大丈夫だったでしょ?玲音は玲音のままでしょ?
    それとも、幽霊さんは玲音のこと殴ったり、声が暴力振るったことはあった?ひょっとしたら、玲音と仲良くなろうとしてるのかもしれないわ。
    あははっ、もしまた見えたらよ?見えなければ問題ないし、見た時の心構えって、大事だと思うの。
    あーまた来たか、と思えば気が楽じゃなーい。

    岩倉玲音:
    私帰る。

    米良柊子:
    どうしたの?先生、なんか悪いこと言った?

    岩倉玲音:
    私、嘘なんかついてない。
    あれは幽霊とかお化けじゃない!
    先生のバカ!!

  • Cou017:

    intrapsychic-apology-glad

    Cou.017intrapsychic - apology - glad

    米良柊子:
    お母さん、すみませんでした。
    あとは大丈夫ですので。
    玲音、ごめんね。
    こうでもしなければ、玲音がもう先生と会ってくれそうもなかったから。
    一言謝りたかったの・・・ごめんなさい。
    先生勝手に決めつけちゃってたね。
    でも玲音に納得してもらって、安心して欲しかったの。
    玲音が「そういうことなんだ」って自分で納得できたら、もう悪い夢なんて見ないで済むんじゃないかって、そう思って。

    岩倉玲音:
    柊子さんごめんなさい。

    米良柊子:
    えっ。

    岩倉玲音:
    玲音、嘘ついてた。
    本当は日記、つけてなかったの。

    米良柊子:
    あぁ・・・いいのよ。
    だって先生、玲音の自由にしてって言ったじゃない。

    岩倉玲音:
    柊子さんは、玲音のためを思って言ってくれたのに。

    米良柊子:
    ありがとう。
    そう思ってくれるだけで、嬉しいわ。
    それじゃあ、先生のことを許してくれるの?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    ・・・よかったぁ、本当に。
    玲音が帰ってから、先生なんか悲しくなっちゃって、涙が出てきたの。
    すごく辛くて・・・嫌われちゃったことが。

    岩倉玲音:
    柊子さん、泣かないで。

    米良柊子:
    あはっ、ダメね、なーんでこんなことで泣いちゃうのかしら。
    ごめんね、玲音。

    岩倉玲音:
    ・・・泣かないで。

    米良柊子:
    今のは嬉しくて泣いてるの。
    ほっとしちゃって。
    よかった。

    岩倉玲音:
    嬉しくて?

    米良柊子:
    嬉し涙なのよ、これは。

    岩倉玲音:
    玲音も嬉しいよ?
    柊子さんが、とっても近くに感じられる。

  • Cou018:

    diary-birthday-present

    Cou.018diary - birthday - present

    米良柊子:
    今日は、カウンセリングはやめにしましょっ!
    せっかく来たんだから、なんか飲む?先生泣いちゃったから、のど渇いちゃった。

    岩倉玲音:
    柊子さん、私、日記つける。
    今度は本当。

    米良柊子:
    無理しなくていいよ。
    玲音は優しい子だね。

    岩倉玲音:
    無理なんかしてないよ。
    自分のためだもの。
    それから、今度声が聞こえたら、なんて言ってるかちゃんと聞いてみる。
    それで柊子さんになんて聞こえたか教えるね。

    米良柊子:
    ありがとう、玲音。

    岩倉玲音:
    それから・・・。
    柊子さん、お誕生日おめでとう。

    米良柊子:
    えっ?あぁっ・・・私の誕生日?

    岩倉玲音:
    これ。
    お母さんと一緒に作ったの。

    米良柊子:
    本当?嬉しい。
    開けていい?

    岩倉玲音:
    うん。

    米良柊子:
    クッキー!
    あーよかったぁ!ちょうどお茶菓子切らしてたし、一緒に食べよ?

    岩倉玲音:
    おいしい?

    米良柊子:
    うん。
    紅茶の味がするけど?

    岩倉玲音:
    先生が「紅茶が好きだ」って言ってたから。

    米良柊子:
    ありがとう。
    じゃあお茶は別なものにしなくちゃね。

    岩倉玲音:
    紅茶と合わない?

    米良柊子:
    合わなくはないけど、せっかくの紅茶の味がわからなくなるのはもったいないから。

    岩倉玲音:
    違う味にすればよかった?

    米良柊子:
    違うのよ、全然。
    そんなことないの。
    玲音がせっかく作ってくれたものだから、ちゃんと味わいたいの。
    ただそれだけ。

    岩倉玲音:
    本当?

    米良柊子:
    本当よ・・・ありがとう、玲音。

    岩倉玲音:
    先生、痛いよぉ。

  • Cou019:

    diary-eye-secret

    Cou.019diary - eye - secret

    米良柊子:
    こんにちは、玲音。

    岩倉玲音:
    日記、毎日つけてるよ。
    あんまり書くことない日もあるけど。

    米良柊子:
    いいのよ、無理しても続かないわ。
    先生なんて、3日坊主で終わった日記帳が何冊あるかわからないもの。
    ・・・あれから、見てない?

    岩倉玲音:
    大丈夫だよ。

    米良柊子:
    そう、よかったわ。
    今日ね、玲音に確認したいことがあるんだけど。

    岩倉玲音:
    なぁに?

    米良柊子:
    玲音は目がすごくいいよね?

    岩倉玲音:
    すごく?

    米良柊子:
    学校で視力検査ってやるでしょ?視力いくつ?

    岩倉玲音:
    ・・・1.5。

    米良柊子:
    その下も見えてたでしょう?本当は。

    岩倉玲音:
    でも、みんなと同じが良かった。

    米良柊子:
    それじゃあ検査にならないわ。
    前の病院で、目の検査もしてたの。
    それは学校とかでやるのと違って、自動的にね、視力がわかるやつなのよ。
    3.0までしか計測できないんだけど玲音が答えたのは3.0だったの。
    ごくまれに極端に視力がいい子はいるし、担当した先生が眼科のお医者さんに相談したけど、問題はなさそうって言ってたわ。

    岩倉玲音:
    そうなんだ。

    米良柊子:
    玲音、窓の外に何が見える?

    岩倉玲音:
    銀杏の木と、遠くに門。

    米良柊子:
    その向こうは?

    岩倉玲音:
    ビル。

    米良柊子:
    その向こうは?

    岩倉玲音:
    山。

    米良柊子:
    その向こうは?

    岩倉玲音:
    見えない。

    米良柊子:
    何も?

    岩倉玲音:
    紫っぽく・・・カーテンみたいな。

    米良柊子:
    ありがとう。
    ごめんね、なんかまた質問攻めにしちゃって。
    そう、玲音には多分私と違う景色が見えてるんだね。
    ほーらぁ、暗くなっちゃダメだよ?気にすることじゃないよ。
    別にそんなに悪いことじゃ・・・ごめん、玲音にとっては悪いことなんだよね。
    違ってることが。

    岩倉玲音:
    わからない。
    でも、多分・・・みんなと違うんだって気がしてた。
    聞こえるのも見えるのも、いつも私だけ。
    気味悪いみたい、嫌われちゃうから。
    それが原因?

    米良柊子:
    かもしれない。
    専門の先生に見てもらった方が・・・いいのかも。

    岩倉玲音:
    嫌。
    私、柊子さんがいい。
    ここの先生って、みんな怖い。

    米良柊子:
    玲音・・・。
    2人だけの秘密にしよう!

    岩倉玲音:
    秘密?

    米良柊子:
    うん、玲音が気にしなくなるまで、二人の秘密。

    岩倉玲音:
    いいの?

    米良柊子:
    先生は玲音のお姉ちゃんなんだから、玲音が怖がっているとこになんか玲音を渡せないって。

    岩倉玲音:
    柊子さん。

  • Cou020:

    sky-delusion-will

    Cou.020sky - delusion - will

    米良柊子:
    おはよう玲音。

    岩倉玲音:
    おはようございます、柊子さん。

    米良柊子:
    あれから、何か見えたりした?

    岩倉玲音:
    ううん、見えないよ。
    ほんとだよ。

    米良柊子:
    何か聞こえた?

    岩倉玲音:
    なんか、ごちゃごちゃ言って聞こえる時はあるけど。

    米良柊子:
    ごちゃごちゃ?一人の人?それとも大勢?

    岩倉玲音:
    大勢。男の人も女の人も。

    米良柊子:
    誰か知ってる人っている?

    岩倉玲音:
    多分いないと思う。

    米良柊子:
    玲音は「空から聞こえる。」って言ったけど、空には何があると思う?

    岩倉玲音:
    空気はあるよね。

    米良柊子:
    そうね、他には?

    岩倉玲音:
    雲とか、太陽とか、星とか・・・。

    米良柊子:
    携帯電話やテレビの電波って知ってる?

    岩倉玲音:
    知ってる。
    無線で送られてくるんだよね?

    米良柊子:
    そう。
    空を飛んでるの。

    岩倉玲音:
    その声が聞こえるの?私。

    米良柊子:
    うーん・・・そういうイメージから作り出されたものかもしれない。

    岩倉玲音:
    そういう病気があるの?

    米良柊子:
    ・・・あるわ。
    「妄想」っていうの。
    神経症とか精神分裂病とかの症状で、簡単に言ったら気にしすぎたり、ストレスとかでそういう妄想を抱くこともあるわ。
    ただ・・・。

    岩倉玲音:
    ただ?

    米良柊子:
    大抵の場合、自分にある程度関係したことが聞こえるの。
    例えば、自分の悪口とか。

    岩倉玲音:
    被害妄想?

    米良柊子:
    そう、玲音は勉強しちゃったんだもんね。
    いいわ、勉強ついでに教えてあげる。
    妄想の定義ってね、内容が誤っていたり、その考えの発生根拠が客観的でなかったり・・・簡単に言うと間違ったことを、自分の中では「それが正しい」って信じ込んでいる状態なの。
    玲音の感じだと自分がそう感じたかもしれないって言ってるけど、確信してない状態は妄想とは言わないの。
    専門用語だけど、「念慮」っていうの。

    岩倉玲音:
    ねんりょ?

    米良柊子:
    まあ、その言葉は忘れてくれてもいいわ。
    さっきも言ったけど、大抵の場合それは自分に結びついたことなの。
    あんまり関係ない妄想ってないのよ。

    岩倉玲音:
    妄想じゃない?

    米良柊子:
    基本的にそうね。
    ただ妄想にもいろいろ種類があって、無理やり当てはめようとすると、何とでも当てはまっちゃうのよ。